長期で資産運用をしたい。何に投資すれば良い?

近年は、つみたてNISAやiDeCoといった、長期投資を前提とした資産運用の制度が用意されています。そこで気になるのは、株や債券、投資信託など、どういった金融商品が長期投資に向いているかどうかです。ここでは、長期投資の基本や投資対象について考えます。
短期・中期・長期の投資スタンスを決めるとリスクを抑えやすい
資産運用にはさまざまなスタンスがありますが、金融商品の売買タイミングで分類する「短期投資」「中期投資」「長期投資」の3つは、もっとも知られた手法です。投資期間は明確に定められていませんが、一般的には次のように認識されています。
・短期投資:数分~1日、数日~数週間
・中期投資:数週間~数か月
・長期投資:1年~数十年
金融商品の価格変動を正確に予測することは、容易ではありません。いつ上る・下がるがわからないからこそ、投資スタンスを決めるのは無意味という声もありますが、決してそうではありません。例えば、平日の日中がメインの取引時間である国内株を、同じ時間帯に働く会社員が短期投資するには、どうしても無理が生じます。ならば中長期で臨むというように、自身のライフスタイルに適した投資スタンスを選ぶことで、ストレスなく投資を楽しむことができ、おのずと長続きします。投資スタンスを決めたうえで勉強すると、無謀な売買を控えるなど、適切な投資判断が下せるようにもなるでしょう。
また、同じ個別株でもゆっくり株価が上下するものもあれば、短期で変動するものなど、値動きは大きく異なります。投資スタンスを限定すると売買する金融商品を絞りこむことができ、選択の負担を軽減することもできます。売買に至るまで一連のプロセスの効率化、売買パフォーマンスの向上の観点から、投資スタンスは決めたほうが良いでしょう。
長期投資は投資パフォーマンスの安定が最大の特徴

投資スタンスにより、狙う利益も異なります。例えば、短期投資で得られる利益は、保有資産を売却した際に発生するキャピタルゲイン(売買差益)です。タイミングによっては金融商品の配当金・分配金、株主優待といったインカムゲイン(保有に対する収益全般)も得られますが、基本的には限られた時間軸における価格変動による売却益を狙うのが、短期投資の特徴と言えるでしょう。
一方、長期投資ではキャピタルゲインとインカムゲインの両方が、収益として期待できます。また、TOPIXをはじめとする株価指数や個別株の過去の値動きを見ると、一時的な要因で資産価値が上昇・下落しても、その後数か月から数年かけて元の価格に戻るケースはよくあり、投資のパフォーマンスを安定させることができるのも特徴です。例えば、2008年のリーマンショック、2020年のコロナ禍で日経平均株価や米S&Pといった代表的な株価指数は激しく落ち込みましたが、その後に価格は戻すばかりか、大きな上昇を記録することに。これらに連動する金融商品を長期的に保有していたら、利益を得ることができました。
金融商品は短期間で大きく値が動くことがあり、短期投資で大きな利幅を狙うことも可能ですが、期待する反対の値動きに巻き込まれると大損する可能性もあります。長期投資にはこうしたダイナミックさはないものの、価格の値幅の変動は落ち着くため、金融商品選びさえ間違わなければ、投資のリスクを抑えやすいのです。言い換えると、短期投資がハイリスク・ハイリターンなのに対して、長期投資はローリスク・ローリターンとなります。
限られた時間で売買を繰り返す短期投資はスリリングさを味わえますが、価格変動が常に気になり、人によってはストレスを感じるでしょう。対して長期投資は価格の浮き渋みに一喜一憂することがなく、精神的にも安心です。頻繁に売買することなく長期保有するため手間がかからず多忙な人でも始めやすく、売買手数料も抑えられます。また、毎月1万円分など、定期的に定額の金融商品を買い付ける積立投資を利用することでまとまった資金がなくても投資ができ、1回でまとめて買い保有するよりも、分散して購入することで取得単価の低減も期待できます。
長期投資には、デメリットもあります。長期投資は時間をかけて行いますから投資効率は良くなく、すぐに利益が生まれるとは限りません。すぐにお金を増やしたい人には、あまり向いているとは言えないでしょう。保有期間中に投資先の運用や経営が傾き、それまで積み重ねた利益がゼロになるリスクもあります。1年から数年単位という先行き不透明な未来を見極める難しさもあり、金融商品選びに時間も要するでしょう。短期投資に比べるとローリスクであるとはいえ、必ずしも安全とは断言できません。
個別株、それとも債券、投資信託…長期投資に向く金融商品とは?
こういった長期投資の特性を踏まえたうえで、どのような金融商品に投資するのが良いでしょうか。いくつか具体例を挙げましょう。
投資先①:株式
企業に投資して利益を狙う株式投資。わずかな時間の株価変動を狙うスキャルピングやデイトレードなど短期投資もできますが、長期的な成長が期待できる銘柄に資金を投じる長期投資にも向いています。せっかく長く保有するのであれば、売買益以外にも配当金や株主優待が期待できる銘柄を持つのがお勧めです。
投資先②:債券
国や公共団体、企業などが、事業資金を借り入れるために発行する債券。満期まで保有すると利子が得られ、債券の額面金額も払い戻される仕組みです。有価証券なので、流動性があれば満期を待たずとも途中で換金することも可能です。発行体が国であれば国債、企業であれば社債と呼ばれ、金融機関を通じて購入することができ、長期投資向きのものもあります。
例えば、日本政府が発行する個人向け国債の場合、固定金利型の3年、5年と、変動金利型の10年の3種類があり、最低でも年0.05%の利率が保証されています。現状では銀行の預貯金より利回りは高く、長期運用の投資先のひとつとして検討の余地はあるでしょう。
投資先③:投資信託
不特定多数の投資家から集めた資金をひとつにまとめ、プロのファンドマネージャーが株式や債券などで運用する投資信託。投資対象や運用方針は商品により異なりますが、投資判断をプロに任せることができるのは大きな特徴で、何に投資していいかわからないという投資初心者には安心と言えるでしょう。基本的には複数の株式・債券で運用するので短期間で価格は上がりにくく、長期運用に向くとされています。投資信託の値段を表す基準価額の変動でキャピタルゲインを狙う、あるいは投資額に応じて得られる分配金も利益の源泉となり、こと分配金は長く保有すればするほど積み上がります。
投資先④:ETF
ETFとは、証券取引所に上場している投資信託のことで、取引所が開いている時間帯は個別株と同じくリアルタイムで価格が変動し、その間はリアルタイムで売買することができます。日本だけではなくアメリカの証券取引所に上場している米国ETFなど海外の商品もあり、投資信託と同じく長期運用に向いたものがたくさんあります。
このように、長期運用に向いた金融商品はたくさんあり、これらをバランスよく組み合わせて投資するのがポイントです。しっかり検討を進めてください。