株主優待の楽しみ方と賢い活用法とは?
一定数以上の株式を保有する株主に対して、企業が自社の製品・サービスなどを提供する「株主優待」の制度。キャピタルゲインやインカムゲインに加え、株式投資の魅力を高めるものですが、具体的にどんな制度で、どのように活用すればよいでしょうか。ここで詳しく解説します。
株主に対する利益還元策の1つ
保有株数や年数で内容が変わること
株主優待とは、企業が自社の株式を保有する株主に対して、自社製品やサービスといった「優待品」を提供する制度です。任意のため全上場企業が実施しているわけではなく、2024年末月時点では約4000社の上場企業のうち、約1500社が導入しています。
その内容は多岐にわたり、自社が取り扱う商品や食事券、割引券、入場券などが一般的ですが、カタログギフトなど自社とは無関係の優待品を扱う企業もあります。「自社の株を持つ魅力をアピールする」「長期的に株式を保有する安定株主の確保」「自社製品・サービスのアピール」など、企業にとってメリットはいくつもあり、これを目的に特定の銘柄を持つ投資家も少なくありません。保有株数が多いほどお得になったり、長期保有する株主によりメリットのある「長期保有制度」を導入する企業も増えています。いずれにしても株主優待は株主に対するお礼であり、利益還元策の1つといえるでしょう。
株主優待を受け取るには、株主として登録される「権利確定日」に株式を保有していなければいけません。かつ、権利確定日に株主になるためには、その2営業日前の「権利付最終日」までに株式を購入する必要があります。例えば、2025年3月31日に権利確定日の銘柄があるとしたら、次のようになります。
3月27日(木):権利付最終日(この日までに株式を保有すれば株主優待を受け取れる)
3月28日(金):この日になれば売却しても権利は失わない
3月31日(月):株主としての権利が確定する
なお、権利確定日は決算日と重なることがほとんどで、企業によっては本決算の年1回、あるいは本決算と中間決算の年2回、株主優待を実施することがあります。株主優待の内容や決算日などについては証券会社の個別銘柄のページや株式情報サイトなどで確かめることができます。
株主優待で実質的な利回りが向上。
ただしこだわりすぎると本末転倒に

投資家にとって、優待銘柄を保有することで家計の節約になる食品や、外出時にお得な割引券などがもらえるのはメリットです。配当に加えて株主優待も利回りに換算すると、投資元本を回収できる期間も短くなります。保有年数により優待の内容がアップする銘柄だと、長期保有するだけで優待に対する利回りも向上します。
一方、株主優待は任意の制度なので、業績の悪化などを理由に規模の縮小や廃止があってもおかしくありません。これにより、優待目的で買っていた投資家が株を手放すと、大きく株価を下げる恐れもあります。実際のところ、株主優待は小口の個人投資家にとって有利・お得な内容であることが目立ち、大口の機関投資家にとって魅力的とは言い切れません。日本市場の主役である外国人投資家にとってはなおさらのことで、換金できないものや生ものの場合、受け取ることすらためらいます。「株主平等の原則に反する」という批判の声もあり、これを受け廃止する企業も出始めているほどです。
また、2022年4月に東証が再編されたことに伴い、旧東証1部の上場基準は2200人以上の株主だったのが、プライム市場では800人以上と、上場および上場維持に必要な株主数も大幅に緩和されました。個人株主を確保するために優待を実施していた企業からすると、維持する必要性は低くなったといえます。現在は金銭的な株主還元が重視されており、優待のコストを減らし、その分を増配や自社株買いといった施策に回したいと考える企業は増えていくかもしれません。
株主優待にこだわりすぎるのもよくありません。いくら優待を受け取れるからといっても、株価が下落し含み損を抱えてしまっては本末転倒です。市場の動向や業績によっては損切りをしてでも手放すべきタイミングがやってくるかもしれません。株式投資の醍醐味は株価上昇や配当金であり、これらを享受できる銘柄を持つべきです。何なら、これらで得たお金でほしい製品・サービスを買えば済むことで、優待に踊らされてはいけません。
なお、優待銘柄の売買で注意したいのは、権利落ち後に株価が下落し、損失を抱えてしまうことです。そこで検討したいのが、信用取引を活用した「つなぎ売り」です。
これは、現物で保有している銘柄を信用取引で売建てすることで、保有銘柄の株価変動による損失を抑える投資手法のこと。株価が下落すると優待目的に現物株式は損失を計上しますが、信用取引の売建では利益が出るため、つなぎ売りをすることで損益を相殺できるのです。具体的には、権利付最終日の寄り付き前に、現物取引の買いと信用取引の売りを成行で同時に行い、同じ価格で約定させることです。
ただし、信用売りをするためには、証券会社に信用取引口座を開設する必要があり、銘柄によっては信用取引の売建ができない銘柄もあります。信用売りに際しては、取引手数料や貸株料、逆日歩といったコストもかかります。
また、決算期をまたいでつなぎ売りをする場合、現物買いでは配当金を受け取り、信用売りでは配当相当額を支払います。そのため、「現物買いで受け取る配当金」と「信用売りで支払う配当相当額(配当落調整金)」の差額が実際のコストになります。
ちなみに、人気の優待銘柄は権利付き最終日に向けて買いが殺到し、株価が上昇することもあります。この流れにより購入し権利落ち日までに売却すると、キャピタルゲインを得られる可能性もあります。株主優待自体は受け取れませんが、値動きを利用するのです。
メリットだけではなく、デメリットやリスクもある株主優待ですが、株式投資が楽しくなる制度であることは事実です。どういった内容なのか、直近の業績や株価などと照らし合わせて、保有や売買を検討しましょう。

