インフレ対策としての資産運用
モノやサービスの価格が継続して上昇する「インフレ」。過度に進行すると賃金の上昇が追い付かず、物価が高すぎると消費者からすると買えない、企業としても売れない状況に陥り、景気の停滞を招くことになりかねません。加えて、インフレ下では現金の価値は実質的に目減りし、資産減にもつながります。どのように対策を打つべきか、ここで考えてみましょう。
インフレに合わせて価格の上昇が
期待できる資産を保有すること
2020年に起きた新型コロナウイルス感染症を機に、欧米をはじめとする先進諸国ではインフレが進行しました。なかでもアメリカのインフレは顕著で、中央銀行はこれまでにないペースで金利を引き上げました。
日本はデフレ(物価が継続して下がる状況)経済が長期化していましたが、ロシアによるウクライナ侵攻などにより、エネルギー価格が上昇し、インフレに転じつつあります。日常に欠かせない電気やガス、ガソリンなどの燃料、小麦粉や食用油、肉といった食料品を輸入に頼っており、インフレや円安が高騰の要因です。それを示すかのように、日本の消費者物価指数は、2020年を100とすると2025年3月末で111.1を記録。前年同月は3.1%も上昇しました。
インフレでも賃金が上昇していれば問題はなく、日本でも労働者の基本給などにあたる所定内給与は伸びています。ところが、厚生労働省が2025年4月7日発表した2月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で1.2%減り、減少は2カ月連続で、物価上昇に対して賃金の伸びが十分とは言えない状況です。こうした状況下では家計の支出を見直すなど、各家庭における節約が効果的な対策となります。
加えて注意しなければならないのは、家庭の資産についてです。モノやサービスの価格が上昇すると、同じ対象であっても多くの支出が必要となり、お金の価値は目減りします。現金の価値は下がるばかりで、かといっていまだ低金利の預貯金を置き場所にしたところで、インフレに追いつくほどの金利を得ることもできません。重要なのは、インフレに合わせて価格上昇が期待できる資産で運用することです。
インフレに強い資産を選び
長期で運用するのがポイント

現金や預貯金などがインフレに弱いことに対して、株式や不動産、エネルギー・貴金属といったコモディティはインフレに強いとされています。
株式について考えてみましょう。株式を発行する企業はインフレ時に自社の製品・サービス価格に転嫁し、収益を増やすことできます。業績が上がれば株価もそれに連動する可能性があるのです。ただし、すべての企業がインフレの波に乗れるとは限らず、銘柄選びは慎重に進めましょう。
投資家から集めた資金をひとつにまとめ、株式や債券などに分散する投資信託も、投資対象がインフレに強い株式などの資産であれば、十分な対策になりえます。投資信託はひとつの商品で分散投資になり、個別株を選ぶのが難しい人にとっても始めやすく、少額で始めやすいのもメリットです。
金や不動産といった実物資産もインフレに強いとされています。金は世界中どこでも価値が認められ公正に換金できる資産であり、物価に連動する性質を持っています。戦争や経済危機が起きると通貨の価値が下がることから金が買われる傾向にあり「有事の金」と呼ばれるほどです。保有しても利息は生まれませんが価値がなくなることはありません。金そのものを意味する金地金や純金積み立て、ETFといった形で投資することが可能です。
不動産も物価上昇に連動する資産として知られています。土地・建物の価格だけではなく家賃も上昇する可能性があり、アパートやマンションなどを購入し入居者から賃料を得る不動産投資は、インフレ時に恩恵を受けられる投資のひとつです。ただし、物件の取得には多額の資金が必要で、金融機関から融資を受けるにも、一定以上の収入や資産、勤務先など高い属性が求められ、誰もが始められるわけではありません。一方、まとまった資金が用意できない場合は、REITや不動産クラウドファンディングといった、少額から始められる方法も現在は普及しています。
日本がインフレになると円の価値が下落するため、外貨建ての資産が対策になることもあります。具体的には外貨預金や外貨建て保険商品が挙げられ、円に比べて高金利であることから、資産が増える可能性もあります。ただし、為替変動の影響は避けられず、購入時より円高になると売却・解約時に為替差損が生じるため注意しないといけません。
このように、インフレに強い資産は複数ありますが、ポイントは長期で分散投資をすることです。特定の資産に資金を集中させたり短期的な運用では一時な下落に巻き込まれる恐れがあり、インフレ対策として十分とは言えません。株式や不動産など複数の資産に分散し、かつ長い目で運用すると、長期的な価格上昇で資産を守りながら増やしやすくなります。加えて、一度に資金を投じるのではなく、「毎月●万円」など積立投資を実践すると平均購入価格が平準化され、利益が生まれやすくなります。
投資上限があるとはいえ、投資による利益が非課税扱いになるNISAの活用も検討しましょう。成長投資枠は株式や投資信託、つみたて投資枠は「長期・積立・分散」に向くとされる投資信託が対象で、投資信託には国内外の株式や外国債券、不動産(REIT)、金など、インフレに強い資産に投資する商品もあります。まずはこういった制度を活用し取り組み始め、経験に応じて投資対象を拡大したり、投じる資金を増やせばよいでしょう。
ただし、こういった戦略を個人で立案・実行することは容易でありません。IFAのような資産経営・運用の専門家に相談することもお勧めです。

