円高・円安が資産形成・運用に与える影響と対策とは?
毎日のニュースで、必ずと言っていいほど耳にする「円高・円安」という言葉。とりわけ、日本は約20年ぶりの円安ドル高水準を更新し、2024年は一時160円台まで進行したことから、大きな話題となりました。では、この為替レートは、株式や投資信託などを使った資産形成・運用にどういった影響を与え、どのような対策を打てば大事な資産を守ることができるのでしょうか。ここでわかりやすく解説します。
円高・円安とは他の通貨と比べときの
円の価値を表すもの
海外旅行やビジネスなどで外貨(外国通貨)が必要になると、金融機関や外貨の両替所で両者を交換することができ、その時の交換比率を「為替レート」と呼びます。為替レートは、両国の金利や景気をはじめとする要因を受け日々変動しますが、円高・円安とは外貨に対して日本円の価値が上下したことを指します。
1ドル100円を基準に考えましょう。このとき、10ドルのモノ・サービスを購入するには1,000円が必要です。ところが、1ドルが80円になると、1,000円で12.5ドル分のモノ・サービスを購入用できるようになります。
このように、外貨に対して日本円の相対的な価値が上がることを「円高」と呼びます。日本円の価格は下がっているのに円高と呼ぶことに違和感を覚えますが、価値は上昇しているのでこう呼ばれるのです。視点を外貨に替えると、1ドル100円の時は10ドルで1,000円を手に入れることができましたが、1ドル80円になると800円しか手に入りません。つまり、円高だと外貨の価値は相対的に下がります。
円安とは反対に、外貨に比べて円の相対的価値が下がることを意味します。先の例になぞらえると、1ドル100円のとき、10ドルのモノ・サービスを購入するためには1,000円が必要です。ところが、1ドルが125円になると、10ドルのモノ・サービスを手に入れるには1,250円を用意しないといけません。
円安になると海外のモノ・サービスを購入する際、同じ対象であっても、今までより多くの日本円を支払う必要があります。つまり、日本円の価値は下がったと言えるわけです。視点を変えると、円安になると外貨の価値は上がります。例えば、1ドル100円のとき日本で1,000円のモノ・サービスを購入するために10ドルが必要ですが、円安が進行し1ドル125円になると、8ドルで済みます。今までより少ないドルで同じモノ・サービスが手に入るので、ドルの価値が上がったといえるわけです。
為替レートの変動は、日常生活やビジネスに深く影響を与えます。
まず、円高では日本円の価値が高くなるので、少ない日本円で海外のモノ・サービスを手にすることができます。個人が海外旅行に行くなら安く済みますし、国内に輸入された海外製品の価格も下がるかもしれません。日本企業は材料やエネルギーを安く調達できるため、輸入が多い企業の業績はよくなるでしょう。一方、日本の製品・サービス価格は上昇するので、自動車をはじめとする輸出産業は海外事業で苦戦する可能性があります。外国人観光客の渡航コストも上がるので、インバウンドの減少を招く恐れもあるでしょう。
円安はその反対です。円の価値が下がるので、海外のモノ・サービスを買うには多くの日本円が必要になり、価格にも反映されます。多くを輸入に頼るガソリンをはじめとするエネルギー資源や食料はそのあおりを受けやすく、近年のガス・電気代、食品価格の上昇要因は、円安といって過言ではないでしょう。ただし、日本から海外のモノ・サービスを輸出する際、海外からすると日本製品を安く買えるようになるので価格競争力は高くなります。輸出産業にとっては追い風に働きます。
為替レートの変動が株式や投資信託に与える影響とは?
為替レートの変動は、資産形成・運用にも影響を与えます。円高は国内の輸入産業にとってはポジティブ、輸出産業にとってはネガティブ要因になり、円安はその反対。業績、さらには株価にも反映されます。現状は歴史的な円安水準なので輸出産業の業績は好調で、こういった銘柄に投資するチャンスかもしれません。日本株を対象にする投資信託も、構成銘柄を確認の上、同様のスタンスで臨むのがよいでしょう。
より深く考えたいのは、海外資産に投資するケースです。例えば、ある米国株の株価が1株100ドル、ドル円の為替レートが1ドル100円だったとします。このとき、この株式の円建て評価は「100ドル/株×100円/ドル=1万円」となります。ところが、株価が変わらないとしても為替レートが変動するだけで、円建ての評価額は次の様に変化します。
■1ドルが90円になると
100ドル/株×90円/ドル=9000円
■1ドルが110円になると
100ドル/株×110円/ドル=11000円
ここからわかるのは、為替レートが円高に進行すると為替差損、円安に進行すると為替差益が生じ、海外投資のパフォーマンスに影響を与えるということです。
実際は、株価も日々変動します。次のようなケースで考えましょう。
■米国株の株価が90ドルに下落すると
・1ドル90円の場合
90ドル/株×90円/ドル=8100円
・1ドル110円の場合
90ドル/株×110円/ドル=9900円
・1ドル120円の場合
90ドル/株×120円/ドル=10800円
■米国株の株価が110ドルに上昇すると
・1ドル90円の場合
110ドル/株×90円/ドル=9900円
・1ドル110円の場合
110ドル/株×110円/ドル=12100円
・1ドル120円の場合
110円/株×120円/ドル=13200円
ここからわかるのは、株価が下がったとしても為替レートが円安に向かうと損失を抑えやすくなる。株価が上昇しても為替レートが円高に向かうと損失が生まれる可能性があるということです。つまり、米国株式に投資する場合は、「株価」と「為替レート」の組み合わせに注意しないといけません。株価が上昇しても円高になると損失が出たり、株価が下がっても円安で利益が生まれるというケースがあります。
外国株式や外国債券、外国REITなど、外貨建て資産を投資対象とする投資信託もたくさんあり、考え方は変わりません。価格変動と為替により円建て評価額は変わり、投資信託の基準価額も上下します。例えば、2021年1月のドル円価格は103円程度で、直近は140円台で推移しています。この間米国の代表的な株価指標である「S&P500」を投資対象とする投資信託を保有していたら、為替差益でも相当なもの。指数も3700ポイント台から約5500ポイントまで上昇したので、この分のリターンもあります。米国経済が堅調ということもありますが、円安トレンド時に海外資産に投資していると、大きなリターンが期待できるというわけです。
ただし、外貨建て資産だけを持っていればよいとは言い切れません。米国は力強い成長を描いていますが、今後も続くとは断言できません。何らかの事情で景気が悪化し、株安、円高へシフトしたとき、米国だけに投資をしていると、資産減らす可能性があります。投資の基本は「分散」なので、米国や日本、欧州など、複数の国・地域にバランスよく資金を投じることが肝心です。

