定年退職後に生活を豊かにするための資産運用
厚生労働省の調べによると、2023年における日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.14歳と、男女ともに前年を上回りました。世界と比べても女性は1位、男性は5位と長寿大国の地位は揺るぎません。まさに「人生100年時代」は目前に迫っていますが、そこで課題になるのが定年後の暮らしです。年金だけで生活するのは現実的ではなく、現役時代から備えておくことはもちろん、老後も積極的な資産運用が求められます。ここでは、具体的な手段について掘り下げます。
公的年金だけで暮らすのは容易ではない
プラスアルファの資産を用意しておくこと
老後の暮らしを支えるとされるのは、原則65歳以上から受給する公的年金(国民年金と厚生年金)です。 日本年金機構によると、2025年度の標準的な年金額は、国民年金(老齢基礎年金(満額))で月額6万3080円、厚生年金は月額23万2784円(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)。夫と妻の働き方で受け取る年金額は上下しますが、おおよそこれくらいの金額が期待できるというわけです。
一方、総務省統計局による2024年の「家計調査年報(家計収支編)」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の実収入の平均額は25万2818円(社会保障給付+その他)に対して、支出額は、月25万6521円。毎月約4000円が不足しています。仮に老後が65歳~90歳まで25年間続くとしたら、120万円近くが足りません。「意外と少ないので現役時代の蓄えや退職金で用意できる」と思うでしょうが、この金額はあくまでも平均値です。旅行など趣味を楽しみたい、子や孫への資金援助、自身の医療・介護、住まいのことを考えると、実際はもっと多くの資金を用意する必要があるでしょう。ここでは老後を25年と仮定しましたが、医療の発展により健康寿命は延び、まさに100歳近くまで生きるとしたら、どうでしょうか。それなりのお金がないと定年退職後に安心したゆとりのある生活を送ることは難しそうです。
そのために現役時代から取り組んでおきたいのが、預貯金は言うまでもなく、株式や投資信託などを活用した資産形成・運用です。とりわけ、現在は投資から得られる利益が非課税扱いになるNISAや、私的年金の一つであり、拠出金が所得控除の対象となり、投資利益は非課税、年金や一時金として受け取る時も税制優遇が受けられるiDeCoもあります。勤務先に確定拠出型年金(企業型DC)や財形貯蓄などの制度が用意されているなら、積極的に活用すべきです。万が一のときの補償と、老後の蓄えが準備できる終身保険を検討してもよいでしょう。
これら金融商品を活用する際のポイントは、「お金に働いてもらう」ということです。日本では2024年に入り政策金利の引き上げが実施されたものの、いまだ預貯金は低金利のままで、金融機関の口座に全資産を預けていても大きく増えることはありません。日常や数年先に必要で減らしてはならないお金は銀行などに預け、当面は使途がない余裕資金は株式や投資信託で長期運用し、老後に備えるのが賢明です。その際は、「ねんきん定期便」などで将来受け取る公的年金、さらには勤務先の退職金の金額をチェックし、老後にどれだけの資産があればゆとりのある暮らしができるかシミュレーションをしておきましょう。自身でするのが不安なら、IFAなど資産形成・運用のプロを頼ることです。
定年退職後も資産運用は可能
「資産寿命」の延伸に取り組む

定年退職後も勤務先が再雇用制度を導入しているなら、同じ職場で働き続けることもできます。現役時に比べると収入は下がるかもしれませんが、今までの経験や人脈を生かしやすいのはメリットでしょう。支出を見直したり、年金の繰り下げ受給(受給開始を遅らせる)といったことを検討したりするのもよいかもしれません。持ち家があるなら、自宅を担保にお金を借りる「リバースモーゲージ」という選択肢もあります。
退職金や預貯金を取り崩すだけではなく、資産運用で増やす方法もあります。株式であれば売買差益に加えて配当金や株主優待がもらえる銘柄があり、生活の足しになるでしょう。ただし、株価は常に変動するのでリターンが期待できる一方で、株価下落で損失を被るリスクもあります。投資対象となる企業の情報や市場環境への理解、株価の予測など、専門的な知識や投資経験が必要です。現役時代から取り組んでいると、大きなアドバンテージとなるでしょう。
個別株投資が向かないなら、資産運用の専門家が株式や不動産などさまざまな投資先に分散投資をして運用する投資信託がお勧めです。プロフェッショナルが投資先を決定し、運用も行ってくれるので手間がかからず、少額から始めることも可能です。株式や投資信託はNISAに対応しているので、運用から得られる利益が非課税になるのもメリットでしょう。
株式や株式が投資対象の投資信託はリスクが高いと思うなら、債券投資が候補に挙がります。債券とは国や地方公共団体、企業などが資金調達をする際の証書のことで、保有することで定期的に利息収入が得られ、満期に元本が返ってくることから安全性が高い運用方法とされます。ただし、途中で売却すると元本割れを起こしたり、発行元が破綻すると債務不履行となり、預けた資金が戻ってこない恐れもあります。なお、投資信託の中には、国内外の債券が投資対象の商品もあるので、低リスクで運用したい場合は、こういったものを選べばよいでしょう。
他にも、マンションやアパートなど購入した物件を貸し出し賃料収入を得たり、不動産を売却して利益を狙う不動産投資、満期保険金や解約返戻金などが受け取れるタイプの貯蓄型保険も、定年退職後の資産運用に活用することができます。
このように、さまざまな金融商品を使えば、会社を辞めてからも資産を増やすことができ、自身の資産寿命を延ばすことは可能です。トライしてみてはいかがでしょうか。なお、この際も「守る」「投資に使う」と、お金に色分けする必要があり、綿密なシミュレーションが必要不可欠です。専門的な知識が求められるため、IFAなどに相談の上進めることをお勧めします。

