資産運用で税金を減らす方法——節税対策の基本を紹介
定期昇給で年収は上がっているはずなのに、税金や社会保険料などの負担増で、なかなか手取りが増えない…。そんな悩みを抱えている現役世代が、生活費や子どもの教育費、老後資金を目的に資産運用を始めています。ところが、投資から得られる収益にも課税されるのが決まり。そこで活用したいのが、国が認めた税制優遇制度の数々です。具体的にどういったものがあるのか、ここで紹介します。
資産運用で利益が出ると課税が必須
節税制度を使うと負担を軽減できる
株式や投資信託などの運用により得た利益には、すべて20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)がかかります。ここでいう利益とは売却益、配当金・分配金のことを指します。証券会社の特定口座で運用している場合は、源泉徴収された後の金額が口座に入金されるので個人が確定申告をする必要はありませんが、源泉徴収なしの特定口座や普通口座運用している場合は、課税対象額が20万を超えると確定申告をしないといけません。
ちなみに、預貯金の利息や債券の利子、不動産売却時の譲渡所得、不動産投資の賃料収入なども、課税の対象です。FX、暗号資産も同様で、日本で何らかの投資(投機)をすると、利益には税金がかかると覚えておきましょう。
ただし、国が用意した税制優遇の制度などを利用すれば、利益にかかる税金を抑えることはできます。具体的には、次のものが挙げられます。
・NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)
NISAとは、株式や投資信託などの金融商品から得られる利益が、非課税扱いになる制度のこと。イギリスのISA(個人貯蓄口座)がモデルになっており、日本では2014年から始まりました。
当初は株式・投資信託が投資対象で、非課税期間は最長5年、年間の投資上限は120万円のNISAのみの提供でしたが、以降に積立投信(あらかじめ用意された商品から選択)が対象のつみたてNISA(年間投資上限額40万円)が始まり、2024年1月からは制度を大きく刷新。旧一般NISAの投資枠の性格を引き継いだ成長投資枠(年間240万円)」、「旧つみたてNISAを引き継いだつみたて投資枠(年間120万円)」に生まれ変わり、制度自体も恒久化されました。非課税保有限度額も1800万円(そのうち成長投資枠は1200万円まで)に引き上げられたことで、より使いやすい制度に生まれ変わることに。これに伴い、NISA口座の開設は増加し、2024年12月末時点でのNISA口座数は約2560万口座に達しています。
上限の範囲内の運用であれば、売却益や配当金・分配金といった投資利益のすべてが非課税となり、高い節税効果が期待できるのがNISAです。銀行や証券会社、保険会社などで1人1口座開設できますが、金融機関によって取り扱う金融商品の種類は異なります。事前に比較してから選ぶようにしましょう。
・iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)
iDeCoとは、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に給付を受けられる、私的年金制度の1つです。20歳以上65歳未満の公的年金の被保険者が対象ですが、公的年金と異なり加入は任意で、加入の申込、掛金の拠出・運用のすべてを自身で行い、掛金とその運用益の合計額をもとに給付を受け取る仕組みです。
同制度では運用益が非課税扱いになるばかりか、毎月の掛金全額が所得控除の対象になり、受け取り時も公的年金等控除もしくは退職所得控除の対象となり、高い節税効果が期待できるのが特長です。掛金は月額5000円からと少額で始めることができ、職業により上限額は異なります。運用方法は投資信託に加え定期預金や年金保険など多岐にわたり、加入者の資金やリスク許容度に応じて選ぶことができます。一度始めると、原則的に60歳以降まで資金を引き出せませんが、税制優遇を受けながら老後の資金が作れる制度として、支持を得ています。
課税口座を使った運用の場合は
利益と損失を相殺できる

NISAとiDeCoは、投資利益が非課税扱いなる、個人の資産作りに適した制度です。長期間の運用になれはなるほど高い節税効果を期待することができ、積極的に活用すべきでしょう。
一方、これら制度の投資上限を超えた分の運用は、特定口座をはじめとする課税口座で行いますが、この場合は、利益と損失を相殺する「損益通算」を活用することができます。例えば、ある年に株式の売却損が生じたときは、別の銘柄の売却益と通算することで、課税対象となる金額を減らすことが可能です。加えて、年間トータルで損失が生じたときは、損失を出した年の翌年から最長3年間まで損失を繰り越すことができる「損失の繰り越し控除」も活用できます。この範囲内であれば損失と利益は通算できるので、結果的に節税となるケースもあるようです。損益通算と損失繰り越しはNISAで使うことはできず、あくまでも課税取引が対象です。損失を計上した場合は、必ず活用しましょう。
株式や投資信託以外にも、不動産投資も物件を取得した際の「減価償却費」や賃料収入から経費などを差し引く「損益通算」が利用できるので、所得税をはじめとする各種税負担を軽減できます。とりわけ、購入不動産の耐用年数に応じて損失を計上する減価償却は、複数年にまたがり所得税額を少なくできることから、実践する人は少なくありません。一方、不動産投資は物件取得のため巨額の資金が必要で、金融機関の融資を受けるのが一般的です。そのためには、ある程度の年収や金融資産の保有などが求められ、誰もが始められるわけではありません。物件を買ったものの入居者がいないと家賃収入も得られず、不動産投資特有のリスクがあるので注意が必要です。
資産運用とは異なりますが、全国の自治体に寄附をすることで節税できる「ふるさと納税」も、手軽に始めやすい節税の方法といえます。原則として寄附額から2000円を除いた一定の上限まで所得税・住民税から控除される仕組みです。かつ、返礼品も受け取れるというメリットもあります。控除される金額の上限額は給与収入や家族構成により異なり、これを超えた分の寄付は控除の対象外です。自身の上限額を把握したうえで始めるとよいでしょう。
このように、資産運用を通じた節税方法は、いくつもあります。投資の基本は資産を増やすことに他なりませんが、税制優遇の制度をうまく使うと利益を増やすことが可能です。ただし、投資の初心者が、これらの制度を理解しながら運用をすることは簡単でありません。IFAのような独立的な立場から顧客の資産作りをサポートする専門家に相談しながら取り組むことをお勧めします。

