いまから住宅ローンを組む際の注意点。金利上昇局面で考えたい「借りられる額」と「返せる額」

資産形成の知識(投資の知識)

マイホームの取得を検討する人にとって、住宅ローンは人生でもっとも大きな金融取引の一つです。長く低金利が続いた日本では、変動金利を中心に、低い返済負担で住宅を購入しやすい環境が続いてきました。しかし、足元では金利環境が大きく変わりつつあります。

背景にあるのは、日本銀行による金融政策の正常化です。これに伴い、住宅ローン金利には上昇圧力がかかっています。さらに、住宅価格も高止まりしており、以前と同じ感覚で借りると、家計への負担が想定以上に重くなる可能性があります。

いまから住宅ローンを組むなら、金利タイプ、返済期間、借入額など、何に注意すればよいのでしょうか。ここでは、金利上昇局面における住宅ローン選びのポイントを整理します。

住宅ローン金利は上昇局面へ

現在の住宅ローン市場でもっとも大きな変化は、金利上昇局面に入ったことです。日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的に利上げを進めてきました。2025年12月には政策金利の誘導目標を0.75%程度へ、2026年6月には1.0%程度へ引き上げています。政策金利が1%に達するのは約31年ぶりであり、日本経済が「金利ある世界」へ本格的に移行したことを示す動きと言えるでしょう。

この変化は、住宅ローンにも波及しています。多くの銀行の変動金利は、短期プライムレートなどを基準に決まり、短期プライムレートは日本銀行の政策金利の影響を受けやすいからです。2026年に入り、主要銀行の変動金利は年1%前後へと上昇しました。メガバンクでは15年ぶりの水準となりました。

一方、固定金利は10年国債利回りなどの長期金利を参考に決まるため、市場の先行きを織り込んで早く動く傾向があります。全期間固定型の代表例であるフラット35も、条件によっては変動金利より金利が高い水準となります。

こうしたなかで、住宅ローン利用者の多くは変動金利を選んでいます。住宅金融支援機構が2026年1月に実施した「住宅ローン利用者の実態調査」によれば、2025年4月から9月に借り入れた利用者のうち、変動型を選んだ人は75.0%を占めました。

ただし、この割合は前回調査の79.0%から4ポイント低下しています。一方で、固定期間選択型は14.9%、全期間固定型は10.1%となり、いずれも前回調査から上昇しました。金利上昇局面を受けて、より長く金利を固定できるタイプへ関心が移りつつある様子がうかがえます。

注目すべきは、利用者の意識の変化です。同調査では、今後1年間の住宅ローン金利について「現状よりも上昇する」と答えた割合が73.7%に達し、前回の65.7%から大きく上昇しました。また、住宅ローンの金利リスクについて「理解しているか少し不安」「よく理解していない」「全く理解していない」と回答した人の合計は52.0%でした。

金融庁も、住宅ローン利用者に対する金利変動リスク等の説明の徹底を金融機関に要請しています。住宅ローンを組む側も、低金利を前提に借入額を決めるのではなく、金利上昇時の返済額や家計への影響を具体的に確認しておく必要があります。

住宅ローンを組むときに意識したいこと

このような環境変化に伴い、いまから住宅ローンを組む人は、何を意識すればよいのでしょうか。ここでは、主な注意点を整理します。

住宅ローンの注意点① 変動金利か、固定金利か
まず考えたいのは、変動金利か固定金利かという、金利タイプの選択です。

変動金利は、一般に固定金利より借入当初の金利が低く、毎月返済額を抑えやすいのがメリットです。家計に余裕を持たせたい人、将来の繰上返済を予定している人、金利が上がっても対応できる資金余力がある人には、適した選択肢となります。

ただし、低い金利がずっと続くことを前提にしてはいけません。変動金利には、金利の見直しや返済額の見直しに関するルールがあり、金融機関によっては「5年ルール」や「125%ルール」が設けられている場合もあります。これらは金利上昇の影響をなくすものではなく、返済額の急増を一定程度ならす仕組みです。利息負担が増えれば元金の減り方が遅くなることもあり、注意が必要です。

固定金利は、全期間固定金利型と固定金利期間選択型の2種類があります。全期間固定金利型は借入時から完済まで金利が変わらず、毎月の返済額を確定できるのが特徴です。将来の金利上昇に不安がある人、教育費や老後資金など大きな支出が控えている人、毎月の返済額を長期的に安定させたい人に向くとされます。

固定金利期間選択型は、借入時に2年、3年、5年、10年などの期間を選び、その期間中の金利を固定する仕組みです。固定期間中の返済額を安定させたい人に適しています。

固定期間の終了後は、その時点の金利水準をもとに、変動金利型へ移行するか、再び固定金利期間を選択します。固定期間終了後の金利水準や選択内容によっては、返済額が変わる可能性があります。固定金利型は変動金利より借入当初の金利が高くなりやすく、低金利が続いた場合には結果的に利息負担が大きくなることもあります。

重要なのは、「どちらが得か」だけで決めないことです。住宅ローンは、投資商品のようにリターンを最大化するものではなく、長く家計に影響する負債です。金利差だけでなく、家計の余裕、収入の安定性、年齢、家族構成、将来の支出、資産運用方針を踏まえて選ぶ必要があります。

なお、「5年ルール」と「125%ルール」の仕組みは、正しく理解しておきたいところです。いずれも、主に変動金利で元利均等返済を選んだ場合に設けられている仕組みです。

変動金利の適用金利は、多くの場合、年2回など定期的に見直されます。5年ルールのもとでは、所定の5年ごとの見直し時期までは毎月の返済額が変わりません。125%ルールは、返済額を見直す際も、見直し前の返済額の125%を上限とする仕組みです。

一見すると、借り手を守る仕組みに見えますが、注意点があります。返済額が据え置かれても、金利上昇分がなくなるわけではありません。据え置き期間中は返済額に占める利息の割合が増え、元金の減りが遅くなります。場合によっては、毎月の返済額だけでは利息をまかないきれない「未払利息」が発生することもあります。

5年ルールと125%ルールのいずれも、返済額の急激な増加を抑える仕組みです。利息負担そのものが軽減・免除されるわけではないので注意しましょう。また、金融機関によってはこれらのルールを採用していない場合もあります。契約前に、自分が利用する住宅ローンがどのような扱いになるのか、商品説明書や返済予定表などで確認しておくことが大切です。

住宅ローンの注意点② 「借りられる額」と「返せる額」は異なる
「借りられる額」と「無理なく返せる額」を混同しないことも大切です。金融機関の審査で提示される借入額は、必ずしも家計にとって安全な借入額とは限りません。

審査では、年収、勤務先、雇用形態、返済負担率、他の借入、物件評価などが見られます。しかし、家計には金融機関の審査だけでは測りきれない支出があります。教育費、親の介護、車の買い替え、住宅修繕、転職、出産、病気、老後資金などです。

たとえば4000万円を35年返済で借りる場合、金利1.0%なら毎月返済額は約11.3万円、金利2.0%では約13.3万円、金利3.0%では約15.4万円になります(※元利均等返済、ボーナス返済なし、借入期間中の金利が一定、手数料・保証料等を含まない単純試算)。金利が1%上がるだけで、毎月返済額は約2万円増える計算です。さらに、管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料、リフォーム費用なども必要になります。

そのため、住宅ローンを考えるときは、物件価格だけでなく、住み続けるための総コストを見なければなりません。マンションなら管理費や修繕積立金、戸建てなら外壁、屋根、水回りなどの修繕費を見込んでおきましょう。

特にマンションの修繕積立金は、将来引き上げられることもあります。毎月返済額だけを見て判断すると、住み始めてから家計が圧迫される恐れがあるのです。

住宅ローンの注意点③ 物件価格の高騰と返済の長期・高額化
近年は、建築費や不動産価格の高騰を背景に、借入額が大きくなり、返済期間も長期化する傾向が強まっています。35年を超える返済期間を選ぶ利用者も増えており、なかには50年ローンといった超長期の商品もあります。

返済期間を延ばせば、毎月の返済額は抑えられます。しかし、その分、総返済額は膨らみやすくなります。とりわけ「金利ある世界」では、わずかな金利差が、長期・高額の借入において大きな金額差となって表れます。

加えて、返済期間が長いほど、完済時の年齢が高齢に及ぶリスクも高まります。定年後も返済が続く計画になっていないか、退職金に過度に依存した返済計画になっていないかを、借入前に冷静に点検しておきたいところです。物件価格が高いからこそ、借入額と返済期間は保守的に見積もる姿勢が求められます。

住宅ローンの注意点④ 住宅ローン控除は「おまけ」と考える
住宅ローン控除は、住宅ローンを組む際の重要な制度です。2026年度税制改正により、住宅ローン減税は5年間延長され、入居日が2026年1月1日から2030年12月31日までの住宅が対象となりました。省エネ性能の高い既存住宅については、借入限度額の引き上げや、子育て世帯・若者夫婦世帯への上乗せ措置、控除期間の拡充も示されています。

ただし、住宅ローン控除は、あくまでも税額控除です。所得税や住民税を一定額軽減する制度であり、住宅ローンの返済そのものを肩代わりしてくれるわけではありません。借入額が大きければ控除額も増えやすくなりますが、その分、元本返済と利息負担も増えます。

特に避けたいのは、「控除を受けられるから借入額を増やす」という考え方です。住宅ローン控除は家計を助ける制度ではありますが、返済負担を軽く見てよい理由にはなりません。住宅の省エネ性能、床面積、入居時期、所得要件、借入限度額などによって適用内容は変わります。物件選びの段階で、控除の対象になるかどうかを確認しておきましょう。

住宅ローンの注意点⑤ 団信と既存保険の重複を見直す
住宅ローンには、団体信用生命保険、いわゆる団信が付くことが多くあります。借入者が死亡または高度障害状態になった場合、住宅ローン残高が弁済される仕組みです。近年は、がん、三大疾病、八大疾病、就業不能などに備える特約付き団信も提供されています

団信は、住宅ローンを組む人にとって大きな安心材料です。一方で、団信に加入することで、すでに加入している生命保険や医療保険と保障が重複することもあります。住宅ローンを組む際には、家計全体の保障設計を見直すよい機会になります。

たとえば、住宅ローンの団信で住居費のリスクを一定程度カバーできるなら、死亡保障を過大に持つ必要はないかもしれません。ただし、配偶者や子どもの生活費、教育費、介護費用まで団信でまかなえるとは限りません。住宅ローンを組む前後で、保険の必要保障額を見直すことが大切です。

住宅ローンの注意点⑥ 繰上返済と資産運用のバランスを点検する
金利が低い時代は、余裕資金を繰上返済に回すより、NISAなどで長期投資を続けたほうが合理的と考える余地がありました。しかし、金利が上がれば、繰上返済によって得られる「確実な利息軽減効果」の価値が高まります。

ただし、繰上返済を急ぎすぎて手元資金が不足するのは避けるべきです。住宅ローンは長期の負債であり、途中で収入減少や大きな支出が起きることもあります。少なくとも生活費の6カ月から1年分程度の預貯金は確保したうえで、繰上返済と資産運用の配分を考えましょう。

住宅ローンを抱えながら投資をする場合は、「低金利で借りて高リターンを狙う」という単純な発想ではなく、家計全体のリスクを見る必要があります。変動金利で大きな住宅ローンを抱え、さらに株式比率の高い運用をしている場合、金利上昇と市場下落、収入減少が同時に起きると家計への負荷は大きくなります。

住宅は生活の基盤であり、住宅ローンは家計にとって大きなレバレッジでもあります。投資と同じように、借入にもリスク管理が必要です。

低金利時代と違う前提で判断すること

いまから住宅ローンを組む人は、かつての低金利時代とは違う前提で判断する必要があります。金利は上昇局面に入り、住宅価格も高止まりしています。変動金利を選ぶ場合は、将来の金利上昇に耐えられる家計かどうかを確認し、固定金利を選ぶ場合は安心感と金利負担のバランスを見ることが大切です。

住宅ローンを考える際に大切なのは、教育費、老後資金、保険、修繕費、税金、資産運用まで含めて、無理なく返せる金額にすることです。住宅ローンは、人生最大級の借金であると同時に、家計の土台をつくる金融商品でもあります。金利タイプ、返済期間、団信、住宅ローン控除、繰上返済、資産運用を切り離さず、全体で判断しましょう。

また、マイホームは、資産である前に生活の場です。だからこそ、目先の金利や控除だけでなく、長く安心して住み続けられるかを基準に選ぶことが、これからの住宅ローン選びではますます重要になるでしょう。

※本稿は2026年7月時点の公的データ等をもとに構成しており、将来の金利動向を保証するものではありません。個別の借入判断については、最新の情報を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

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