「国債利回り」の変化は、資産運用にどう影響する?
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経済のニュースなどで時折耳にする「長期金利の上昇」や「国債利回りの低下」といった言葉。なんとなく「金利が上がることで、経済に変化が起きている」と感じる人も多いでしょう。しかし、自分の生活や資産運用にどう影響するのか、具体的にイメージできる人は少ないかもしれません。
国債利回りは単なる債券市場の指標にとどまらず、株式や不動産、為替などのあらゆる金融資産に影響を与える指標です。ここでは、国債の基本から利回りの意味と変動する仕組み、個人投資家の資産運用に与える影響と対策について解説します。
「国債」の基本をおさらい
国債とは、国が資金調達をするために発行する債券です。投資家は国に資金を貸し、対価として利子を受け取り、満期になると元本が返済される仕組みです。元本や利息の支払いに責任を持つのは国です。信用力の高さから、「安全性の高い資産」として位置付けられています。
なお、世界各国の国債は、S&Pやムーディーズといった格付け会社が、政府のデフォルト(債務不履行)リスクを分析し、債券の信用力を「AAA」から「D」などの記号で格付けしています。この評価は、投資家が利子の支払いと元本の返済が確実に行われるかを判断する際の基準となります。日本の国債は主要格付け会社では、A~AAで評価されています。信用度は高いものの、最上位(AAA)と比較すると低く、巨額の政府債務や人口動態がリスク視されています。
日本の国債は残存期間により短期(1年以内)・中期(1年超から5年以下)、長期(5年超から10年以下)、超長期(10年超)などに分類されます。なかでも、金融市場で注目されるのが「10年国債」であり、その利回りが長期金利の代表的な指標として、各種金融商品・ローン金利の目安とされています。
「国債利回り」とは何か?
国債には、満期時に国から返済される「額面金額」、額面に対して毎年支払われる利息の割合である「表面利率(クーポン)」、貸したお金が返済される「償還日(満期)」が定められています。固定金利の場合、満期まで持ち続けると、どれだけの利息が得られるのかあらかじめわかるので、収益の見通しが立てやすい金融商品と言えるでしょう。
日々のニュースなどで話題になるのは、表面利率(クーポン)ではなく「利回り」です。両者の違いは以下の通りです。
・表面利率(クーポン):発行時に決められた、額面金額に対する利息の割合
・利回り:市場価格で国債を購入し、満期まで保有した場合に得られる年率換算の総収益率
国債は発行された後も金融市場で日々、売買されています。そのため「額面100円」の国債が、市場の需給により「90円」あるいは「110円」で取引されることもあります。よって、国債の利回りは購入価格によって変動します。
「債券価格」と「金利」は、シーソーの関係
債券市場には「利回りが上がると債券価格は下がる」「利回りが下がると債券価格が上がる」という、シーソーの関係があります。
たとえば、表面利率1%の国債(価格100円)を持っているとします。その後、世の中の金利が上がり新しく表面利率2%の国債が発行されると、どうなるでしょうか。
多くの投資家は古い1%の国債を100円で買いたがらないため、価格は99円、98円と値下がりします。安く買えるようになった結果、古い国債を市場価格で買った場合の利回りは上昇するわけです。
つまり、「国債利回りが上昇した」というニュースは裏を返すと、「市場で国債が売られ価格が下落した」ことを意味しています。この場合の基準として用いられるのが10年国債です。「長期金利が上昇」と報じられた場合、「10年国債の市場価格が下落して利回りが上昇している」ことになります。
国債利回りが変動する要因とは?
国債が売買され、利回りが変動する要因には、どのようなものがあるのでしょうか。大きく4つの要因があります。
要因① インフレ(物価上昇)への懸念
物価が上昇すると、お金の相対的な価値は目減りします。すると、固定の利息しか受け取れない国債の魅力は低下するため投資家は国債を売却し、株式や不動産などインフレに強い資産へ資金を移します。結果、国債価格は下落して利回りは上昇します。
要因② 中央銀行の金融政策
日本銀行やアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)などの中央銀行は、インフレの抑制などを目的に政策金利を操作し、世の中に出回るお金の量を調整します。インフレを抑えるために政策金利を引き上げると、国債利回りも連動して上昇しやすくなります。一方、景気を刺激するために政策金利を引き下げると、国債利回りも低下します。
2024年から2025年に、日本銀行が利上げを実施しました。2024年3月、マイナス金利の解除を皮切りに、同年7月に政策金利の誘導水準を0.25%程度に引き上げ、2025年1月に0.5%程度、2025年12月に0.75%程度に引き上げられています。
結果、日本の10年国債利回りは、2026年からは概ね2.1%から始まり、現在は2.6%前後で推移しています。対して、米国でも2022年3月から2023年に急速な利上げを実施した結果、10年米国債利回りは約1%台から5%台まで急上昇しています。
要因③ 景気・経済の動向
景気が拡大して企業業績や雇用が改善すると、投資家は安全な国債を売って、より高いリターンが期待できる株式等のリスク資産に資金を移します。安全性の高い資産である国債から資金が流出して価格が下がり、利回りは上昇します。反対に景気後退懸念が高まると、株価下落を恐れた投資家が安全資産である国債に資金を避難させることで、国債の価格は上がり利回りは低下します。
要因④ 海外金利の動向
日本の国債利回りは、アメリカの国債利回りの影響を強く受けます。米国金利が上昇すると「日本の国債より米国債のほうがお得」と考える投資家が増え、日本の国債は売られて利回りが上昇しやすくなります。
国債利回りの変化は、資産運用にどう影響するのか?

国債利回り、すなわち長期金利の変動が影響するのは、債券市場だけではありません。金融市場全体に、広く影響を及ぼします。
まず、一般的に国債利回りが上昇すると、株式市場には逆風となります。なぜ逆風となるのでしょうか。金利が上がると企業の融資返済負担が増え業績を圧迫します。加えて、安全資産である国債の利回りが上昇すると、投資資金は株式から債券にシフトするからです。
特に影響が大きいのは、将来の大きな成長を期待して買われている「グロース株(成長株)」です。金利上昇の影響を受けやすく、株価が急落しやすい傾向にあります。
一方、銀行などの金融株は、貸出金利と預金金利の差が拡大して利益が増えやすいため、金利上昇はプラスに働くことがあります。
債券投資に関しては先に述べた通り、利回り上昇は価格下落を意味するため、評価損が発生する可能性があります。特に満期までの期間が長い債券ほど影響は大きいでしょう。反対に、これから債券を購入する投資家にとっては、利回り上昇は高い利子を得られるチャンスです。
なお、債券を直接保有していなくても、債券に投資する投資信託やETFを保有している場合も、金利上昇局面では商品の基準価額が目減りし、一時的な含み損を抱えることになります。
国債の利回りは為替市場にも影響を与えます。日本の金利が上昇すると円建て資産の魅力が高まり、円高要因になる可能性があります。反対に海外金利が上昇すると、投資家はより高い利息を求めて円を売り外貨を買うので、円安を誘います。
不動産市場でも、国債利回りは重要な指標です。住宅ローンの固定金利は長期国債利回りを参考に設定されると言われています。
10年国債利回りが1%上昇すると、固定金利型住宅ローン金利も影響を受けるので、借入コストや返済負担の増加につながります。なお、変動金利は日本銀行の政策金利である短期金利に影響を受ける仕組みです。
個人投資家が知っておきたい、注意点と対応策
ポイント① 個人向け国債を活用する
「国債は安全」という認識から長期国債を保有していた投資家にとって、利回り上昇局面での価格下落は痛手になります。なかでも残存期間が長い国債ほど、金利の変化で価格が変わりやすいので注意が必要です。
また、金利が上がる局面で価格下落リスクを負わずに恩恵を受けられるツールは「個人向け国債」の「変動10年」です。「変動10年」の場合、基準金利に応じて半年ごとに適用金利が見直されるため、世の中の金利が上がれば受取利息は自動で増えていきます。
しかも、日本国が発行しているためデフォルトリスクは低いとされ、発行から1年が経過すると中途換金も可能です。中途換金すると、直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685 の中途換金調整額が差し引かれますが、債券ファンドのように金利上昇による価格下落のダメージを受けにくいといえます。生活防衛資金や当面使う予定のない資産の預け先として選択肢に入れて良いでしょう。
ポイント② 株式は焦らず、積立投資を継続する
利回り上昇は株式全体に下落圧力をかけますが、影響の大きさは銀行、IT、不動産といったセクターにより異なります。グロース株などは利回り上昇に弱く、バリュー株や金融株は相対的に強い傾向があります。
金利環境を前提にポートフォリオを構成することが肝心です。NISAで全世界株式インデックスや米国株インデックスで積み立てている場合、テクノロジー関連銘柄の比率が高いため、急激な利回り上昇局面では一時的な下落が生じやすい点は理解しておきましょう。テクノロジー関連銘柄は、グロース株であることが多く、利回りの上昇に弱いからです。
なお、金利上昇のニュースが流れると株式市場がパニックとなり、株価が急落することがあります。しかし、長期的な資産形成を行っている場合、ここで慌てて売却してしまうのは、もっとも避けるべき行動です。長期的に見ると企業の利益成長が金利上昇分を吸収し、株価が回復することは歴史的に何度もあり、特に積立投資は淡々と継続することが重要です。
ポイント③ 住宅ローンは、金利タイプを見極める
変動金利の住宅ローンを契約している家庭にとって、国債利回りの上昇は切実な問題です。変動金利は短期市場金利(政策金利)に連動するため、日本銀行の利上げが続くと半年ごとの見直しで返済額が増加したり、返済額に占める利息分が多くなったりします。資金に余裕があれば、繰り上げ返済や固定金利型への切り替えを検討するのも一手です。
国債利回りは、「金融市場全体」の基準となる指標
国債利回りは債券だけではなく、株式や為替、企業活動、私たちの生活に影響を与える指標です。利回りを動かす要因を理解し、各資産にどう波及するかを把握しておくことが重要と言えるでしょう。
特定の資産に依存するのではなく、国債利回りの動きを見ながら分散投資を徹底する。長期的な資産形成を安定させるためにも、上手に活用していきましょう。

