資産運用の守りを固める「債券投資」の基本

資産形成の知識(投資の知識)

資産運用といえば株式や株式を対象とした投資信託に注目が集まりがちです。しかし、株式と同じくらい重要なのが「債券」です。債券は比較的リスクが低く、分散投資の中核として活用されています。

ただし、その仕組みやリスクを十分理解しないままに投資すると、思わぬリスクに直面するかもしれません。ここでは債券投資の初心者向けに、商品の基本知識を解説します。

債券とは、国や企業が資金を調達するための「借用証書」

債券とは、国や地方公共団体、企業等が、投資家から資金を調達する目的で発行する「借用証書(有価証券)」のことです。つまり、債券に投資するのは、発行体に対してお金を貸すことを意味します。

投資家はその期間中、あらかじめ決められた利息(クーポン)を定期的に受け取ります。さらに、債券にはあらかじめ満期(償還日)が定められており、その時点で貸したお金(元本=額面金額)が原則として全額戻ってくるというのが、基本的な仕組みです。

いくつか専門的な用語が出てきました。それぞれ以下のように覚えておきましょう。

【債券に関する用語】
発行体:資金調達をする主体。国・地方公共団体・企業など
額面金額:満期時に返済される元本
クーポン(表面利率):額面金額に対して毎年支払われる利息の割合
償還日(満期):元本が返済される日。1年未満の短期から数十年など長期までさまざま
発行価格・市場価格:新規発行時の価格。流通市場では需給・金利により市場価格は変動する
最終利回り:現在の市場価格で購入し、満期まで保有した場合の年率換算の収益率

株式との違いは?

株式投資は、「企業の成長性に投資し、利益の一部を配当や値上がり益として受け取る」仕組みです。配当は企業業績に左右されます。

一方、債券投資は「利率や満期など、あらかじめ決められた条件でお金を貸す。その後、定期的に利息を受け取り、満期がきたら元本を受け取る」仕組みです。一般的に、価格変動は小さく、投資計画を立てやすいローリスク・ローリターンに位置づけられます。ただし、債券のなかには、発行体の信用力や為替リスクからミドルリスク・ミドルリターンの性質を持つ商品もあります。

必ず理解しておきたい「債券価格」と「金利」の関係

債券投資で重要なのが、「金利が上がると債券価格は下がる」という逆相関の原則です。

たとえば市場金利が上昇すると、新たに発行される債券の利回りが高くなるため、既存の低利回りの債券に対する魅力が薄れ、需要が落ちて価格は下がります。反対に市場金利が低下すると、既存の債券の価値は相対的に高まり、価格は上昇します。

この仕組みを理解しないと、途中売却時に損失が発生する可能性があります。

国内から海外、社債まで。債券の主な種類

債券には発行体や通貨によって、さまざまな種類があります。代表的なものを見ていきましょう。

■国内債券(日本国債・地方債・個人向け国債)
日本国が発行する国債などが代表的です。「個人向け国債」などは、満期に元本が戻る約束がされているため、値動きが安定した金融商品の一つです。

個人向け国債には、変動金利型10年・固定金利型5年・固定金利型3年の3種類があり、最低1万円から購入できます。利率は財務省の発行時期によって異なっており、財務省のホームページで確認できます。いずれのタイプでも、経済情勢などにより実勢金利が低下した場合でも年率0.05%の最低金利が適用されます。発行後1年が経過すると、額面1万円単位での中途換金が可能です。

地方債は都道府県・政令指定都市などが発行する債券で、国債に準じた高い信用力を持ちます。国債よりもわずかに利回りが高い傾向にあり、地域のインフラ整備などに資金が使われるため、社会貢献の意味合いも持ち合わせます。

■外国債券(米国債など)
海外の政府や企業が発行する債券です。米ドルやユーロなど外貨建てで発行されることが多く、一般的に日本の債券よりも金利が高い傾向にあります。

代表的なのはアメリカの米国債で、世界中の機関投資家が保有しています。先進国の国債は低リスク資産として位置付けられる一方、利回りが高い新興国の債券はデフォルト(債務不履行)リスクが高いとされています。また、為替変動リスクも生じます。

債券投資のメリット

次にメリットとデメリットを見ていきましょう。まず資産運用に債券を組み入れるメリットは、大きく3つあります。

メリット① 安定したインカムゲイン
債券のメリットは、満期まで保有することで定期的な利息収入(クーポン収入)が得られる点です。固定金利の場合、購入時点で「いつ、どれくらいの利息が支払われ、いつ元本が戻るか」が確定しているので、安心して保有できます。

発行体が債務不履行に陥らないかぎり額面通りに元本も返済されるので、教育資金や老後資金など一定期間後に必ず資金が必要な投資家にとっても安心材料になるでしょう。特に高金利局面にある外国債券は、安定した外貨ベースの利回りを求める投資家にとって魅力的な選択肢と言えます。

メリット② 株式に比べて価格変動リスクが低い
債券は満期まで保有すれば、額面金額が戻ってきます。また、債券のクーポンは発行体が債務不履行に陥らないかぎり契約通りに支払われます。株式のように日々の市場価格の変動に一喜一憂する必要がありません。

一方、株式の配当は企業業績により増減・廃止されることがあります。債券は株式と比べ、精神的な負担が少なく、投資初心者にも扱いやすい商品と言えるでしょう。

メリット③ 分散投資によるポートフォリオの安定化
一般的に、債券と株式は異なる動きをする傾向があります。景気が悪化して株価が下落する局面では、中央銀行が景気を下支えするために金利を引き下げることがあります。

金利が低下すると、すでに発行されている債券の利回りが新たに発行される債券よりも魅力的に映り、債券価格は上昇しやすくなります。株式と債券を組み合わせることで、ポートフォリオ全体の価格変動を抑えやすくなります。50~60代以降の投資家が資産を守るフェーズでは、債券の比率を高めることがリスク低減に寄与します。

債券投資のデメリットと注意点

債券は比較的安全な資産ですが、ノーリスクではありません。以下の点を理解しておきましょう。

デメリット① 金利変動リスク
先述の通り、市場金利が上昇すると既存債券の価格は下落します。2022年に米国が急速な利上げを実施した局面では、米国長期国債の価格が大幅に下がりました。金利上昇による価格下落リスクには注意が必要です。

デメリット② 信用リスク
発行体である国や企業が財政難に陥り、利息の支払いが滞る、満期になっても額面金額が返済されないリスクです。利回りが異常に高い債券は、このリスクが高いことの裏返しです。投資の際は、格付け機関が発表する信用格付けを参考に、発行体の財務健全性を見極めましょう。

デメリット③ インフレリスク
固定金利の債券は、物価が急激に上昇した場合、受け取る利息や元本の実質的価値が目減りする可能性があります。たとえば、年2%のインフレが続くなかでクーポン1%の債券を保有すると、実質的にはマイナスのリターンになります。

注意点として挙げるのは、外国債券の為替変動リスクです。仮に米国債で5%の利回りを受けても、円高が5%以上進めば円換算のトータルリターンはマイナスになります。

また、個別の外国社債は流動性が低く、満期前に売却しようとすると大きなスプレッド(売値と買値の差)が生じることもあります。これを避けるには個別債券ではなく、債券を対象とした投資信託・ETFを通じた分散投資が現実的な代替手段となります。

株式に「加えて」債券を持つことで、資産寿命を延ばす

債券投資の特徴は、「定期的に利息を受け取りながら、基本的には満期時に額面金額を受け取れる」点にあります。20代や30代といった資産形成層であれば、リスクを取って株式100%運用するのも合理的な戦略ですが、年齢を重ねて守りのフェーズに入った人や、数年以内に使う予定のある資金を運用したい人にとっては、価格変動がマイルドな債券は有効な金融商品です。

一方で、金利や信用、インフレ、為替といったリスクを理解しないままに保有すると、安全だと思っていたはずの債券投資で大きな損失を被る恐れがあることも事実です。特に長期の固定金利型や新興国の債券は、見た目の利回りの高さに惑わされず、冷静にリスクを評価しないといけません。

個人投資家の現実的な活用法としては、個別債券の直接投資ではなく、低コストの債券インデックスファンドやETFを通じた分散投資もあります。日本国内では「個人向け国債」が、安全性と流動性を兼ね備えた入門的な金融商品です。

年齢、資産状況、リスク許容度、ライフプランに合わせて、株式や投資信託だけでなく、債券を資産運用に組み込んでみてはいかがでしょうか。バランス良く組み合わせることで、長期的な資産形成の助けとなるはずです。

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