資産運用での心理的バイアス。投資判断を狂わせる思考の罠とは?
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株式や投資信託などを使った資産運用を始めると、本来であれば取るべきではない不合理な投資判断を下すことがあります。直感や先入観、思い込みなどにより合理的な判断ができず、間違った行動をとってしまうのです。こういった意思決定などの際に、無意識のうちに影響を受けることを「心理的バイアス」と呼びます。ここでは資産運用(投資)に関係する心理的バイアスについて解説します。
お金に合理的でありたいものの、行動が必ずしも結びつかない
本来、人は合理的であろうとしますが、先入観や思い込み、恐怖などが邪魔をして、非合理な行動をとってしまいます。これを「心理的バイアス」と呼びます。お金が絡む投資においても、よく見られる現象です。具体的に見ていきましょう。
■損失回避
損失回避とは、同じ金額であっても「利益を得る喜び」と「損失する痛み」のうち、「損失する痛み」を大きく見積もる心理傾向を指します。この心理傾向は、アメリカの心理学者ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが提唱したプロスペクト理論 によって示されました。
「損失する痛み」がある場面では、人は「確実な損失」を避ける行動を取りがちです。たとえば、「①100%の確率で45万円を失う」「②90%の確率で50万円を失う」という選択肢がある場合、多くの人は②を選びます。②のほうが損失額は大きいですが、「確実に」45万円を失うことを避けたい心理が働くからです。損失を回避できるかもしれない10%の可能性に、一縷の望みをかけているということです。
これを投資に当てはめると、「金融商品に利益が出ている時は早めに利益を確定する」「含み損が生じた場合は損失を確定させたくないため売却をためらう」といった行動が見られます。本来であれば見切りをつけて損切りする場面でも、含み損を拡大させて売るに売れなくなってしまうのは、無意識のうちに損失回避行動を取っているからなのです。
■アンカリング
アンカリングとは、最初に提示された情報に引きずられ、その後の判断・意思決定に影響を与えることです。「アンカー(anchor)」とは、船の「いかり」を意味します。アンカリングは、判断をする際に最初に得た情報が、いかりのようにその場に居留まらせようとすることから、そう呼ばれています。投資においては、初期の価格や予想に固執することを指します。
たとえば、以前は1000円だった株価が500円まで下がると、割安であると感じて購入してしまうことがあります。一方、以前は1000円だった株価が1500円まで上昇すると割高だと感じ、購入を避けてしまうことがあります。割安と思って買っても、その後、株価は下がり損をしてしまうかもしれません。割高と思って買わなかった銘柄の株価が、さらに上昇してチャンスを逃すこともあり得ます。
■確証バイアス
確証バイアスとは、すでに持っている情報や考えを重視する、都合のよい情報ばかりを収集する傾向を指します。典型的なのは血液型占いです。「A型=几帳面」といったイメージがあると、そのイメージをもとに人を判断してしまいます。
投資に関しても、「情報を集めやすい銘柄に投資先が集中する」「保有銘柄に対して肯定的な情報ばかり集める」「買わなかった銘柄のネガティブな情報のみを探して自分を納得させる」といったケースが、確証バイアスに当てはまります。
確証バイアスに捉われないためには、「感情に流されず客観的な判断に基づいた情報を集める」「情報の偏りをなくす」「自身の考えを否定する情報や、都合の悪い情報にも目を通す」「情報の正しさを疑う」といった思考を持つことです。また、統計データや数字を参考にする場合は、その出所も意識しましょう。公的データにあたることや、専門家の分析によるデータをチェックすることです。また、自分とは利害関係のない第三者の意見を求めることも、確証バイアスに陥らないために大切です。
■現状維持バイアス
現状維持バイアスは、合理的には変えたほうが良いにも関わらず、現状維持を選ぶ心理傾向のことです。よくあるのが、通信費などの固定費を他社に変更すれば節約できるのに、変更の手間や、使い勝手が変わるなどの心配からそのままにしておく、といったことです。
投資においては、「リスクに見合わないポートフォリオにもかかわらず変更しない」「投資対象の売り時・買い時を逃す」といったことは、現状維持バイアスに起因するものかもしれません。人は変化を恐れるものです。変化にはリスクや不確実性が伴うため、それらを避けるため、現状維持を選ぶ傾向にあります。とりわけ、人は失敗するリスクを避けたい気持ちから、新たなチャレンジに対して慎重になりがちです。慣れ親しんだものは選びやすく、手放したくないという心理も働くでしょう。
一方、現状維持は変化に対応できず、大切な資産を危険にさらす可能性があります。最新の情報を収集したり学習したりすることを忘れず、かつ現状にフィットした投資の選択をすることが肝心です。
感情に振り回されない「客観性」を重視した投資を

心理的バイアスの代表的な例を挙げてきましたが、投資の経験者なら思い当たる節があるのではないでしょうか。他にも「後悔してしまいそうで、損切りできない」「めったに起きないことも、起きるかもしれないと考えて行動できない」「周囲の多数意見に流される」など、心理的バイアスは数多くあります。
投資は合理的に考えるものですが、人は合理的な判断ばかりできるものではありません。人がする以上、投資にも感情が伴います。「あの時に売らなければ(買わなければ)よかった」「直近の高値水準だから買うタイミングではない」など、過去の経験や情報に気持ちが動かされると、合理的な判断が難しくなります。
心理的バイアスが投資判断を誤らせる。そのことを意識するだけで、心理的バイアスに左右されにくくなるでしょう。「自分の考えに固執せず、周りの意見を聞く」「客観的な情報収集と投資判断に努める」「PDCAを回して投資の精度を上げる」、こうした行動を実践することで、先入観や思い込みを回避しやすくなります。数字ばかりではなく、自分の気持ちとも向き合いながら、客観性を持った投資をしていきましょう。

