「退職金」の賢い運用方法とは?
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長年勤めあげた勤務先から受け取る退職金は、これまでの努力の結晶であると同時に、人生のなかでもまとまった金額を手にする数少ない機会です。これからの老後生活を支える資金になるからこそ、「銀行に預けたままでいいのか」「投資で増やすべきか」と悩む人も少なくありません。しかし、正しい知識がないと大切な資産を減らす恐れもあります。ここでは、退職金を運用する際の基本的な考え方から、具体的な手法を解説します。
退職金の運用には守るべき「原則」がある
「人生100年時代」と言われるなか、公的年金だけでゆとりある暮らしを維持するのは容易ではありません。退職金は極めて重要な資金ですが、老後資金という特別な資産だからこそ、その扱いには注意が必要です。以下の考え方を押さえておきましょう。
① 使うお金と運用するお金を分ける
退職金の全額を投資に回すのは危険です。以下の3つに色分けしましょう。
・守るお金:急な病気や災害に備え、生活費の1~2年分を現金で確保する
・使うお金:自宅のリフォームや車の買い替え、旅行、子どもへの援助など。元本保証の定期預金や個人向け国債などで管理する
・増やすお金:10年、20年先を見据えて運用に回す余剰資金
現役時代の資産運用は、将来に向けて資産を増やすのが主な目的でしたが、退職後は生活費として使いながら、減らさずに長持ちさせることが大切です。上記のように色分けすると、失敗を防ぎやすくなるでしょう。
② 一括購入を避け、時間を分散させる
一度に全額で株式や投資信託を購入すると、買った直後に相場が暴落した場合、立ち直れないほどのダメージを負うことがあります。これを避けるため、時間を分けて、少しずつ買い足していくことを徹底しましょう。あるいは、運用資金の一部を一括購入に充て、残りは積立投資に回すなど、複数の運用方法を組み合わせることも効果的です。
③ 大きなリターンを目標にしない
退職金、すなわち老後の資産運用では、年利10%といった高いリターンを狙うのは禁物です。ハイリターンの金融商品はリスクも高く、運用が失敗すると致命的な損失につながりかねません。インフレは考慮しつつも、年利2~3%程度の安定した運用を目指すだけでも、資産の寿命は延びます。
具体的には、どういった運用方法が考えられるでしょうか。もっともシンプルなのは、預貯金で保有する方法です。元本が保証されており、必要な時はすぐに引き出せます。ただし、金利が低く資産はほとんど増えず、インフレに弱いため、実質的な価値が目減りする可能性は知っておくべきでしょう。2026年3月時点では、メガバンク3行の金利は0.3%となっています。守るべき最低限の生活資金や、数年以内に使う予定のお金の置き場所として活用するのが適しています。
次に考えられるのが、国債や社債といった安定的な金融商品です。なかでも、日本政府が発行する個人向け国債は、最低金利0.05%が保証されており、半年ごとに適用金利が変わる変動金利型の「変動10年」と、発行時の利率が満期まで変わらない固定金利型の「固定5年」「固定3年」があります。元本割れのリスクが極めて低く、保有から1年経過すれば額面1万円単位での中途換金も可能です。
一方、金利上昇時には国債や社債の価格が下落する可能性があり、利回りも決して高くありません。社債の場合は、発行体の信用リスクを見極める必要があります。債券系の金融商品は、使うまでに少し時間のあるお金を置くのに向いています。
退職金の一部を成長に回すという意味で、株式や投資信託で運用する考え方もあります。NISA(少額投資非課税制度)を使うと運用から得られる利益は非課税となり、「つみたて投資枠」では投資信託の積み立ても可能です。
投資信託であれば、1つの商品で分散投資ができます。指数に連動する運用成果を目指すインデックスファンドであれば、低コストで運用できる点も魅力です。インフレに比較的強く、長期的に見れば世界経済の成長に合わせてリターンが期待できる商品もあります。ただし、短期的な価格変動は大きく、外国資産に投資する商品では為替変動リスクも無視できません。
投資信託の運用対象は多岐に渡りますが、株式だけではリスクが高く不安に感じる場合は、国内外の株式や債券、REIT(不動産投資信託)などに、あらかじめ決められた比率で投資するバランス型ファンドの活用も検討しましょう。なお、投資信託は元本保証の金融商品ではないため、一括投資はタイミングリスクが高く、生活資金を投じるとストレスになることもあります。投資資金の上限を決め、積み立てによる時間分散を意識することが重要です。
株式投資は定番の運用方法であり、定期的な現金収入を重視する世代に人気なのが、高い配当金を出す「高配当株」への投資です。年金に上乗せして、定期的に配当金を受け取れるため生活の足しになります。銀行や商社など日本の大型株や米国の高配当株は業績が安定しており、インフレ時でも株価が安定、もしくは上昇しやすい傾向があります。
しかし、特定の企業に投資するため、業績悪化により減配(配当金が減る)や無配(配当がなくなる)のリスクがあり、株価の変動リスクも避けられません。複数銘柄への分散投資など、一定の知識と工夫が求められます。
退職金の「一部を使いながら」運用して、人生の後半を豊かに

退職金はすべてを守りに回す必要はなく、一部を使いながら運用するのがおすすめです。日常生活や旅行、学び直し、健康への投資など、人生を豊かにすることへ使うことも立派な活用法です。ただし、使いすぎると資金不足に陥るため、全体の資産配分を把握したうえで、使う部分・守る部分・運用する部分を分けて考えましょう。
運用において大切なのは、資金を枯渇させないことです。たとえば2000万円を年利4%で運用したとします。毎年80万円ずつ利息が入るため、80万円だけ取り崩せば、税金や手数料を考慮しないならば、理論上は元本の2,000万円を維持できる計算になります。退職後の運用では、増やすことだけではなく、「いつ、どれだけ取り崩すか」という出口戦略を含めた設計が欠かせません。
資産を守るうえで避けたいのは、レバレッジをかけた短期トレードや、元本以上の損失が出る可能性のある取引です。また、世の中には退職金を狙った不透明な金融商品・サービスも存在します。信用できる金融機関を通じた運用を心がけましょう。
退職金の運用は、ライフスタイルや価値観、健康状態、家族構成により最適解は異なり、誰にでも当てはまる正解はありません。重要なのは、ただ増やすことではなく、生活資金を確保したうえで、残りの資金を債券やNISAなどの非課税制度を活用した低コストの投資信託や高配当株などに分散投資すること。守りながら一部を成長に回す、資産寿命を延ばすという視点を持ち続けることで、退職金をより効果的に活用できるようになるはずです。

