投資信託の基準価額とは。株価やETFとの違い、取引時の注意点を解説

資産形成の知識(投資の知識)

NISAなどで投資信託を買う際、多くの人が最初に戸惑うのは「基準価額」です。投資信託の基準価額は1万口あたりの価格で示され、株価のようにリアルタイムで変動しません。一方、株式は「1株〇円」という形で価格が一目でわかり、市場の取引時間中は常に変動しています。ここでは、投資信託の基準価額の考え方や算出方法、株式やETF(上場投資信託)との違い、取引において投資家が知っておくべき注意点を解説します。

「基準価額」とは「投資信託の値段」のこと

投資信託における基準価額とは、簡単に言えば「投資信託の値段」のことです。スーパーマーケットやコンビニエンスストアで並んでいる商品に「1個〇円」と値段がついているように、投資信託にも価格がついています。

投資信託は「口(くち)」という単位で数えられます。一般的に、多くの商品は運用が始まる時点(設定時)において「1口=1円」として計算され、基準価額は1万口当たりで公表されます。

投資信託は、多くの投資家から募った資金を一つにまとめて運用する金融商品で、その運用成果は日々上下します。ファンド全体が保有している株や債券などの資産価値が上がれば基準価額も上がり、逆に資産価値が下がると基準価額も下がります。

つまり、基準価額とは、その投資信託がどれくらい成長したかを示す成績表の役割も担っているのです。たとえば設定時に1万口あたり1万円で設定された投資信託があるとします。その後、1万3,000円に変化した場合、その投資信託は設定時から30%値上がりしたことになります。

基準価額はどうやって算出されるか

基準価額は、投資信託を運用している会社、または投資信託会社から業務委託された信託銀行が、毎営業日に以下の計算式を用いて算出・公表しています。計算式は次のようになります。

基準価額=純資産総額÷総口数×1万
(1口=1円の場合)

「純資産総額」とは、その投資信託が組み入れている株式や債券などの資産をその日の時価で評価した合計額から、信託報酬や監査費用といった運用コストを差し引いた「純粋な資産」のことです。「総口数」は、投資家が保有している口数の合計です。

たとえば、ある投資信託の純資産総額が100億円で、総口数が50億口だったとします。この場合、「100億円÷50億口×1万=2万円」となり、基準価額は2万円として公表されます。

投資信託の基準価額が公表されるのは、「1日に1回」だけであり、この基準価額に基づき購入や換金が行われるルールです。注意が必要なのは、基準価額が公表されるのはその日の申し込みを締め切った後であるという点です。

投資家は、適用される基準価額がわからない状況で取引を行う「ブラインド方式」で注文を出すことになります。これは、あらかじめ価格がわかっていると特定の投資家が有利となり、既存の投資家の利益が阻害されるのを防ぐためのルールです。

株価との違い

投資初心者が混同しやすいのは「基準価額」と「株価」の違いです。両者は価格という意味で似ていますが、その決まり方や性質は大きく異なります。

まず株価は、市場における「買いたい人」と「売りたい人」の需給バランスによって決まるものです。企業の業績が良くなくても、買いたい人が多ければ株価は上がります。対して基準価額は、株価のように市場の需給で直接決まるわけではありません。その投資信託が保有している株式や債券など「中身の時価の合計」で決まります。どれだけ多くの投資家が特定の投資信託を購入しても、中身の資産価値が上がらない限り、それだけで基準価額が上がるわけではありません。

次に、上述のとおり基準価額は「1日に1回」しか公表されません。一方、株式は市場が開いている間は常に株価が変動し、リアルタイムの株価で売買します。

さらに、株式は企業単体の価値をダイレクトに反映します。投資信託は複数の資産に分散されているため、一般的に値動きは個別株より緩やかになる傾向があります。

ETF(上場投資信託)の価格との違い

ETFは投資信託の一種ですが、価格の決まり方は通常の投資信託とは異なります。ETFは、株式と同じく証券取引所に上場しているため、市場でリアルタイムに売買されます。そのため、ETFには「市場価格(リアルタイムで取引される価格)」と「基準価額(投資信託本来の資産価値)」の2つの価格が存在します。

ここで注意すべきは、この2つの価格にズレが生じる点です。たとえば、ETFの基準価額(中身の価値)は1万円なのに、買いたい人が殺到して市場価格が1万1000円に跳ね上がったり(プレミアム)、反対に安くなったりする(ディスカウント)ことがあります。一般的な投資信託では「基準価額=取引価格」ですが、ETFでは市場価格と基準価額が一致しないケースがあるのです。

また、ETFは株式と同様に、価格を指定する「指値注文」、指定しないで即時約定する「成行(なりゆき)注文」が可能です。ただし、流動性が低いETFで成行注文を出すと、思わぬ高値や安値で約定するリスクが生じます。

出来高の少ない時間帯や相場が大きく動く局面では、指値注文を使う方が安心です。積み立てや長期保有が目的であれば通常の投資信託、短期的な売買や市場の動きに機動的に対応したい場合はETFといった使い分けをするのが一般的です。

投資信託の取引で知っておきたい注意点

基準価額の性質を解説してきました。次に、取引ではどのような点に注意すべきか、ポイントを紹介します。

注意点① 注文時は買値・売値がわからない

先述の通り、投資信託の売買は「ブラインド方式」で行われます。たとえば、米国の株式に投資する投資信託の場合、米国市場が終わった後の日本時間に注文を出しますが、適用されるのはその日の夜(翌朝)に算出される基準価額なので、「米国株が大きく値上がりしたのを確認してから、値上がり前の安い価格で買う」といった、“後出しじゃんけん”はできない仕組みです。

ブラインド方式は一見すると不透明に映ります。しかし、公平性を担保しており、リアルタイムの価格を追う必要がないため、日中は仕事で忙しい人も落ち着いて投資できる安心な仕組みともいえます。

注意点② 「基準価額が高い=割高」ではない

株式の場合、実際の価値に対して株価が高すぎ(割高)・安すぎ(割安)といった判断をしますが、投資信託の基準価額は単に中身の資産の時価評価を口数で割っただけのものなので、そういった概念に当てはまりません。

たとえば、基準価額が2万円の投資信託は、設定時の1万円から資産が2倍に成長した実績を示しているだけです。基準価額が安いからと言って、今後上昇しないわけでもありません。基準価額の大小で投資信託の良し悪しや、割安感を比較することは意味がないのです。

注意点③ 分配金が出ると基準価額は下がる

投資信託のなかには、定期的に分配金(決算時に運用収益の一部を投資家に還元)を支払う商品があります。この際に注意したいのは、分配金は投資信託の純資産のなかから支払われるため、基準価額が下がる「分配落ち」という現象が起きることです。

分配金は預貯金の利息と異なり、「自分の資産の一部を払い戻している」側面があるため、基準価額が下がったからといって「運用に失敗した」と早合点しないよう注意しましょう。なお、長期的な資産形成が目的であれば、分配金を受け取らず投資信託内で再投資するタイプを選ぶのがセオリーです。

注意点④ 購入・解約時のコスト

購入時の「購入時手数料」、保有時の「信託報酬」に加え、解約時に「信託財産留保額」が差し引かれる商品もあります。これらはすべて投資家の負担となるコストです。頻繁に売買はコストを増大させるばかりか、純資産総額にも影響を与え運用成果を削る原因になります。

基準価額を正しく理解して投資する

基準価額を理解すれば、「今日は下がったから手放そう」「高いから買うのをやめよう」といった、目先の変動に振り回されなくなります。「どんな資産に投資しているか」「運用コストは適切か」「自身の投資目的に合っているか」、こうした中身を見極めることが大切です。

基準価額は、運用会社が投資家の代わりに資産を運用した結果を示したものです。日々の細かい値動きに捉われず、長期的な視点で運用を続けていきましょう。

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