資産運用における「円建て」と「ドル建て」商品の違いとは?

資産形成の知識(投資の知識)

「貯蓄から投資へ」の動きを推進してきた日本。NISAの普及などを通じて、海外資産を含めて運用する投資家が増えてきました。米国株への個別株投資や、全世界株式を対象としたインデックス投資は、もはや珍しくありません。しかし、ここで多くの投資家が直面するのは「円建ての商品にするか、ドル建ての商品にするか」という選択です。本稿では円建てとドル建ての資産運用の違いと、それぞれメリット・デメリット、使い分けについて解説します。

「円建て」と「ドル建て」の基本的な違い

資産運用における「円建て」「ドル建て」とはどういう意味なのでしょうか。その定義を整理しましょう。

■円建て商品
日本円で決済し、資産価値も日本円で評価されるのが円建ての金融商品です。円での預貯金や日本株のほか、日本で販売される投資信託の多くがこれに当たります。

■ドル建て商品
米ドルで決済し、資産価値も米ドルで評価されるのがドル建ての金融商品です。米国の個別株や米国ETF(上場投資信託)、外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)などが代表例です。購入するには基本的に米ドルが必要で、分配金や売却代金も米ドルで受け取ります。ただし、一部の証券会社では円貨で購入できる場合もあります。

「円建て商品=為替リスクと無縁」は間違い

円建て商品は、基本的に為替変動の影響を受けません。たとえば100万円を銀行の定期預金に預けると、何年経過しても元本保証で100万円は戻ってきます。為替がどう動こうと受け取りは円で確定しています。預金以外にも、円建ての国債・社債、国内株式、日本国内の資産だけで運用する投資信託は、為替変動の影響は受けない商品です。

一方、円建てでも「為替リスクがある」商品もあります。たとえば、円建ての「S&P500インデックスファンド」に投資している場合、ファンドマネージャーは円を米ドルに替えて米国株を購入しています。したがって、株価が動かなくても円安になると円建ての基準価額は上がり、円高になると下がります。

そもそも、為替リスクとは何でしょうか? たとえば、ドル建て商品は円に換算する際に為替レートが影響します。1万ドルを保有していた場合、換算時のレートが1ドル=150円なら150万円ですが、1ドル=200円(円安)になれば200万円に増え、反対に1ドル=100円(円高)になれば100万円に目減りします。

この「円換算時のリスク」が為替リスクです。つまり、外貨建て商品のリターンは、「資産価値の変動」と「為替変動」の2つの要素で決まるので、為替変動の影響を直接的に受けることになります。

円建て商品のメリット・デメリット

円建て商品は、普段の生活と同じ通貨で資産を管理できるため資産状況を把握しやすく、投資初心者でも扱いやすいでしょう。特に毎月の積み立て投資においては、銀行口座の引き落としやクレジットカードを通じて買い付けまで自動化できるため、継続しやすいのもポイントです。

円建て商品は投資家自身が購入・売却時に外貨へ両替する必要がない点もメリットです。日本の投資信託は100円といった金額指定で購入できるので、少額投資にも向いています。

デメリットとしては、資産が円建てに偏るリスクがあることです。日本円の価値が下落した場合、資産全体の実質的な価値が目減りする可能性が生じます。

さらに、上述のように円建ての投資信託であっても海外資産に投資している場合は、間接的に為替の影響を受けます。投資信託であれば為替変動の影響を受けない「為替ヘッジあり」の商品を選ぶなどの工夫が求められます。

ドル建て商品のメリット・デメリット

ドル建て商品のメリットは、通貨分散ができる点です。資産を米ドルのまま保有することは、日本円という通貨自体の価値下落(インフレや円安)に対するヘッジとなります。とりわけ世界基軸通貨である米ドルを持つことは、日本円だけに依存しない資産構成にできます。

円安局面では為替差益を得られる可能性があり、資産価値を押し上げる要因となります。長期的に見て円安トレンドが続く場合は、ドル建て資産の保有が有利に働くでしょう。また、米国ETFは低コスト商品が多く、コストを削減したい投資家にはドル建てが有利です。

一方、ドル建て商品にもデメリットがあります。円高局面では為替差損が発生するリスクがあります。資産そのものが値上がりしていても、円換算での評価額が下がるケースが考えられます。かつ、両替をする際は為替手数料がかかるため、頻繁な売買や少額の両替を繰り返すと、コストが積み上がります。

さらに、NISA以外の課税口座では、ドル建て資産から得られる分配金には、米国で10%の源泉徴収がなされたあと、日本国内でも約20%の課税がなされます。いわゆる「二重課税」です。

二重課税は確定申告で「外国税額控除」の申請をすれば、回避・低減できます。ただし、確定申告に慣れていない人にとってはハードルが高い作業になるかもしれないため、デメリットと言えるでしょう。

円建て・ドル建て商品の使い分けのポイント

円建てとドル建て、それぞれの特徴を見てきました。ここからは使い分けのポイントを紹介します。

ケース① 「生活防衛資金」「近い将来に使う資金」は、円建て商品へ
日本に住んでいるなら、日常生活では円で支出するため、緊急時にすぐ使える生活防衛資金は、普通預金など、円建ての流動性の高い資産で保有しましょう。住宅購入の頭金、子どもの教育費など3~5年以内に使う予定のある資金なども、円高局面での目減りリスクを避けるため円建てで持つのが基本です。

ケース② 「長期資産形成」「老後資金」は、ドル建て商品も組み合わせる
10~20年以上先を見据えた長期運用を前提とした資産形成では、円一本に集中するリスクに配慮した通貨分散が効果的です。たとえば、国内の個別株や、国内株を対象とした投資信託を保有しつつ、NISAで低コストの円建てインデックスファンドを積み立てる方法があります。加えて、ドル建ての米国株や米国ETFを組み合わせることで、通貨・地域・商品の多様化が図れます。

ケース③ 「海外移住」や「多国籍な生活」を望むなら、ドル建てが合理的
将来的に海外移住・長期留学・海外での起業などを考えている場合は、そもそも円に戻す必要がありません。円建て商品を選ぶ理由は薄れ、直接米ドル建て商品で資産を積むほうが合理的です。外貨建て保険や外貨定期預金などを活用した、米ドル積み立ても選択肢に入ります。

円建て・ドル建て商品を選ぶ際に注意することは?

円建て・ドル建ての商品を選ぶ際には、いくつかの注意点があります。順に見ていきましょう。

■投資の目的を明確にする
まずは、自身の投資目的を明確にすること。短期的な値動きを抑えたいのか、長期的な成長を重視するのかによって、適した通貨は異なります。また、現在の為替レートが高値か安値かを予測するのは不可能であることを前提に、無理のない範囲でリスクを取ることも考えなければいけません。

コストにも注意が必要です。特にドル建て商品では為替手数料が発生するため、トータルコストを確認したうえで投資判断をしましょう。

■ハイブリッドな視点を持つ
円建て商品は、安全、シンプル、かつ制度的に有利といった特性を持ち、日本に生活基盤を構える多くの人にとって資産形成の主軸になります。どちらか一方に偏るのではなく、目的や時間軸、リスク許容度に応じて組み合わせることが、これからの資産運用の基本的な考え方となります。たとえば、片方に全振りするのではなく、「コア資産は円建ての投資信託で積み立て、余裕資金でドル建てETFを保有する」というハイブリッドな考え方もできます。

為替は、資産運用において避けて通れない要素の一つです。通貨の違いを正しく理解し、円建てとドル建ての商品を適切に組み合わせることで、より安定した資産形成を目指すことが大切です。

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