運用の目的に応じて使い分け。投資信託の分配金受け取りコースと再投資コースの違い

資産形成の知識(投資の知識)

投資信託を購入する際、多くの投資家が迷うのは「分配金受け取りコース」と「分配金再投資コース」の選択です。「定期的にお金を受け取ろう」と考えるべきか、「将来のために少しでも資産を増やそう」と考えるべきか、判断に迷うこともあるでしょう。ここでは両者の違いや選び方、見落としがちな注意点について解説します。

投資信託の運用で得た収益の還元

投資信託の分配金とは、運用で得た収益(利子や配当、売却益など)の一部を投資家に還元するお金のことです。一般的には、投資家が保有する口数に応じて支払われます。

このように解説すると「株式の配当金と同じ」と思われがちです。しかし、その仕組みは多少異なります。投資信託の分配金は運用会社が状況を見て決定します。必ずしも利益から支払われるわけではありません。ここで重要なのは、「普通分配金」と「特別分配金(元本払戻金)」の違いです。

・普通分配金
運用により生まれた利益(収益)から支払われる分配金です。日々算出される投資信託の基準価額は、分配金を支払った後に下落します。これを分配落ちと言います。普通分配金に該当するのは、分配落ち後の基準価額が、投資家の個別元本(購入時の基準価額)を上回っている場合です。受け取った普通分配金は、利益とみなされて課税対象となり、一般口座や特定口座では20.315%の税金が源泉徴収されます。

・特別分配金(元本払戻金)
運用の収益だけで分配金をカバーできない場合に、元本の一部を払い戻す形で支払われる分配金です。分配落ち後の基準価額が、個別元本を下回る場合に発生します。このケースは、「自分が預けたお金が戻る」だけなので非課税です。実質的には資産は増えておらず、元本が削られている状態です。

つまり、「分配金が多い=お得な投資信託ではない」ということです。分配金の性質を理解したうえで、受け取り方を選ぶ必要があります。

分配金受け取りコースと再投資コースの違い

分配金が出る投資信託を購入する際、証券会社によっては「分配金受け取りコース」と「分配金再投資コース」を選ぶことができます。両者の違いを見ていきましょう。

・分配金受け取りコース
決算時に発生した分配金を、現金として受け取るコースです。税金を差し引いた後の金額が、投資家の証券口座や銀行口座に振り込まれます。この場合、分配金が支払われた後の投資信託の純資産額(基準価額)は分配金の分だけ下落します。

分配金受け取りコースの特徴は、定期的に現金収入を得られる点です。「生活費の足し」や「年金の補填」など、現在のキャッシュフローを重視する人に向いています。特に定年退職後の生活費として活用するケースが目立ちます。

注意点は、元本に分配金を加えたものを新たな元本として利息を計算する、複利効果を得ることができない点です。加えて、運用成績や分配方針によって減額される場合や、支払われない場合があります。分配金の支払いが保証されていないケースには注意が必要です。

・分配金再投資コース
分配金を受け取らず、自動的に同じ投資信託の追加購入に充てるコースです。現金は手元に入りません。しかし、投資家の保有口数は増加するため、より高い運用効果が期待できるのが特徴です。

分配金再投資コースのメリットは、利益を再投資することでさらに利益を生む「複利効果」を活用できる点です。長期投資において資産の増加スピードを飛躍的に高める効果が期待できます。「長期で資産を増やしたい」「当面は資金使途がない」といった人に向いており、資産形成を目的とした運用では、こちらを選ぶケースが多いと言えるでしょう。

ただし、分配金は自動で再投資に回され、現金は受け取れません。生活費や定期的な収入が必要な人にとっては不向きです。

なお、課税口座での取引の場合、どちらのコースを選んでも普通分配金には20.315%の税金が課せられます。ただし、NISA口座を利用すると、いずれのコースでも非課税です。

ライフステージに応じて使い分けるのがポイント

分配金受け取りコースと再投資コース、どちらが優れているかは、年齢や、運用の目的、資産状況によって異なってきます。今すぐの現金よりも、将来の老後資金や教育資金を増やしたい現役世代なら、再投資コースを選びたいところ。長期投資を前提にしているなら、複利の力を借りない手はありません。

一方、資産を増やすフェーズから使うフェーズに移行したシニアであれば、受け取りコースが心強い味方になります。年金の補填にしたい人や、趣味や旅行の資金に使いたい人に向いています。また、資産を維持しながら投資利益を得たい富裕層にとってもメリットがあります。

コース選択は固定である必要はなく、ライフステージに合わせて見直すことが大切です。現役世代のうちは再投資コースで資産を積み上げ、退職後に受け取りコースに切り替えるという戦略もあります。ただし、一部の投資信託や金融機関では途中でコース変更ができない場合もあるため、事前に確認しておくことが大切です。

分配金受け取りか、再投資か。コースを選ぶ際の注意点

NISA口座でコース選択をする際は、いくつかの注意点があります。NISA口座で分配金を再投資する場合、その再投資分は「非課税投資枠」を消費します。すでに枠を使い切っていると、「再投資分は課税口座で購入される」、あるいは「再投資が行われない」というケースがあります。非課税枠をフル活用したい場合は、分配金を出さない「無分配型」もしくは「低分配型」の投資信託を選びましょう。

分配金受け取りコースで「高分配型」や「毎月分配型」を選ぶと、多くの現金が手に入る感覚になります。しかし、それが特別分配金であれば、自分の元本を削っているだけかもしれません。上述したように、基準価額は下がり最終的なパフォーマンスがマイナスになることも……。基準価額の推移を運用報告書などでチェックして、運用実態の把握をすることが重要です。

再投資コースを選んでいても、普通分配金が出るたびに税金は差し引かれます。その残りで再投資をするため、頻繁に分配金を出す投資信託は複利効果の観点からは最適とは言えません。税効率を重視するなら「無分配型」「低分配型」の投資信託が選択肢となります。

資産形成の結果に大きな差を生む

分配金受け取りコースと再投資コースは、長期で見たときに、資産形成に大きな差を生みます。どちらが正解とは一概に言えず、運用の目的やライフステージに合わせて使い分けることが大切です。

コースを選ぶ前に、投資の目的や運用期間、必要なお金、税制との兼ね合いを整理しておきましょう。また、目論見書や運用報告書で投資信託の分配金の方針を確認しておくことも、自分にとっての良い選択肢を取るための判断基準になるはずです。

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